新共同訳聖書 日本聖書協会 1987年
現在、国内の教会やキリスト教主義学校などでおそらく最も広く用いられている日本語訳聖書です。1987年に日本聖書協会から刊行されています。
この翻訳の背景には、世界情勢が関わっています。第二ヴァチカン公会議以来カトリックとプロテスタントの協力の気運が高まりました。そして1962年に、ヴァチカンとプロテスタントの聖書教会世界連盟とが協力し、世界の各国語で共同訳聖書を発行する方針が立てられたのです。日本でもこの動きに呼応する形で1962年にカトリックとプロテスタント両派の学者が集まり、共同訳の提案がされました。三年後の1969年には共同訳聖書実行委員会が発足し、共同訳に取り組んでいきます。そこでは、できるかぎり原文に忠実であり正確であること、という基本方針から固有名詞表記も原文の発音に近いものにすることになっていきました。そして、1978年に新約聖書のみの共同訳聖書を発表しますが、意訳の問題や「イエスス」や「パウロス」などの固有名詞の表記問題、また、これまで親しんできた語句が意訳によりなくなるなどの批判が相次ぎ受け容れられませんでした。
そのため、新たな共同約聖書の翻訳が進められ、1987年に旧新約聖書をそろえて新共同訳として出版されることになりました。それは全く新しい訳と言えるものであり、一定の評価を受けるものであるでしょう。もちろん、固有名詞の表記の問題が残る部分や意訳の問題などが全くないわけではありません。しかし、『口語訳聖書』と並んで現状の日本語訳聖書としてはよいものと言うことできるでしょう。なお、カトリック教会とプロテスタント諸派の共同訳のため、教派によって扱いが分かれる第二聖典(アポクリファ)も「旧約聖書続編」として収録しているものも刊行しています。