文語訳聖書 日本聖書協会 1917年
文語訳聖書は現在でも根強い人気をもつ翻訳であるでしょう。また、日本文学への影響も指摘されており、文化的貢献も高い翻訳です。なお現在、日本聖書協会から『文語訳聖書』として販売されているものは、一般的に明治訳と呼ばれる旧約聖書の翻訳と大正訳と呼ばれる新約聖書の翻訳を合わせたもです。
明治訳は、ヘボン、ブラウン、グリーンなどの宣教師が1972年に委員会(翻訳委員社中)を作り翻訳が進められました。委員会の編成からも分かりますが、この出版事業は英米聖書協会に依存していたため宣教師中心の翻訳となっています。また助手として奥野昌綱、松山高吉、高橋五郎の三人に代表される日本人が協力していたようです。そして、新約聖書が訳されました。旧約聖書の翻訳に関しては松山高吉、植村正久、井深梶之助の三人が正規の委員になっています。しかし一年もたたずに解散しているので、全体としての翻訳の責任は宣教師にあると言われています。また、明治訳が完成する前の1878年にはすでに改訳の必要が指摘され、1910年には改訳に着手しています。宣教師四人、日本人四人の計八人で委員会が組織されました。なお、発行は英米聖書協会でした。そして、1917年に新約聖書が発行され、これが大正訳とよばれています。また、明治訳と大正訳は共に英語訳聖書(Revised Version)の影響が多分にあり、ほぼ重訳とさえ言ってよいとものとなっています。