口語訳聖書 日本聖書協会 1954年
1954年に新約聖書、1955年に旧約聖書が日本聖書協会から出版された翻訳です。それまで広く用いられていた文語約聖書に代わり、プロテスタント教会を中心に広く用いられています。近年では新共同約聖書に移行してきていますが、根強い人気もある翻訳です。
口語訳聖書の時代背景としては、第二次世界大戦後、新仮名づかいや当用漢字の導入によって口語訳(現代語訳)する必要があるという日本の情勢の変化がありました。また、当時のアメリカにおいて聖書をその時代の現代語に訳す方針があり、その影響も強く受けたのです。そのような時代の中で、翻訳委員会が組織され1952年にはマルコ福音書の試訳が発行されたのです。そして、1954年に新約聖書、1955年に旧約聖書が完成することになりました。なお、口語訳聖書は日本語の聖書翻訳史上で大きな功績とされます。それまでの訳と異なり、宣教師などに頼らず、日本人によってなされた初めての訳であるのです。
口語訳聖書の問題点として、日本語の文体が指摘されることがあります。例えば一人称の代名詞が「わたし」、二人称の代名詞が「あなた」に統一されたことや敬語が「られる」に統一されたことです。また、RSV(Revised Standard Version)に代表される英語訳聖書への極端な依存とも言える参照が指摘されることがあります。しかし、これは一方で史上最良の翻訳翻訳の一つとも言われるRSVに基本を置くことによって口語訳聖書もよい訳になったとも言うことができるでしょう。
なお、口語訳と名銘打った翻訳は他にもありますが、「口語訳聖書」という名称を使う場合、一般的には日本聖書協会から刊行されたものを指すと考えてよいと思います。